山形で講演しました。

上山の唯一のショッピングセンター、「カミン」の広場にて、田舎時間について講演(!)しました。

これは私がスピーチする前のミニライブ(!)。

よく見ると、「週末を上山で過ごす田舎時間」という看板が。ギターを弾いているのは私じゃないです。念のため。

私です。


今回の内容は、田舎時間のこれまでの活動報告です。過去3年間ちょっとの活動で、活動実施回数50回、のべ参加人数250名、リピート率35%、という全体のまとめと、具体的な活動例を、写真を交えて説明しました。

講演の後は、私(貴山)、中山、(受入農家の)吉田さんの3名が、パネルディスカッションのような形で進めました。その後は、会議室に移って、今回の講演を企画して頂いた「上山まちづくり塾」の塾生の方々と、フリーディスカッションです。

講演して、皆さんと議論をして、私自身も今までの考えをすっきりさせることができて、良い機会でした。

今回の大きな収穫は以下の2点。

①田舎時間のコンセプトが、上山で拡がりはじめたこと。
これまでがんばって頂いていた上山側の受入窓口であるダブル井上さんの地道な御努力が、ついに、という印象です。過去の参加者も同じ印象を持っていると思いますが、ダブル井上さんがいなければ、ここまで継続することはできなかったと思います。あらためて、ありがとうございます。

②農業体験と田舎体験は必ずしも同じではない、という事に(貴山が)気づいたこと。
田舎時間の参加者がここのところ伸び悩んでいる理由、私がなんとなく違和感を持っている原因が、ここにあることに気づきました。
上山の農業、特に田舎時間で訪問する農家は、日本の果樹農業の中でも最前線の方々ばかりです。そこでは、農業は既に近代化していて、生活もそれにあわせて近代化しています。そこでの体験は、必ずしも田舎体験とはなりません。

これからも田舎時間を継続していき、最低1ヶ月に1組は上山を訪問するためには、今のままでは、正直なところ、人を集めることは難しい。新規参加者数も、既に2回参加したことのある参加者が3回4回と回を重ねていく回数も、少しずつですが下がっています。じゃあ、どうやったらもっと人がきてくれるか、リピート率が高まるかというと、(コストをこれ以上下げるのは難しいので)体験内容の魅力度をあげるしかありません。

熱意があって、最前線を走る農家にお邪魔して、農家の方のお話を聞きながら、農業体験させて頂く事だけで十分満足な参加者もいますが、それだけでは足らない参加者の方が多いと思っています。
参加してしばらくは、強烈な体験(と楽しい思い出)が残っているのですが、時間がたっていくと、また参加したいという気持ちも、友達を誘いたいという気持ちも薄れてしまいます。
そうならないように、農業体験をベースにしながらも、少し田舎体験を交えて、もっと上山に来たい、と思ってもらう必要があります。

ここでいっている田舎体験とは、田舎の生活、知恵を、体で感じる、ということ。
例えば、囲炉裏で食事する、晩御飯の前にちょっと裏山にいって山菜とか雑草をとってくる、朝に川にいって仕掛けをしかけておいて取れた魚やカニを晩御飯に食べる、旬のもの・保存食を使った郷土料理を作る、自家用に野菜を干す、などなど。

例えば、昼間は今まで通りの農作業でも、晩御飯だけ、農家の方が子供の頃にしていたように、日本家屋で囲炉裏を囲んで食事する、そういうことを「自然に」やる、ということができれば、参加者の満足度が全く違ってくると確信しています。
この時、「自然に」というのがミソで、無理して参加者を接待すると、その雰囲気は参加者にも伝わってしまい、お互い楽しくありません。

今回の私が参加した干柿体験でいうと、干柿を乾燥させている部屋に入って、干柿の匂いが充満した部屋で吊るした干柿を見る、袋詰めをする、磨くのは「農業体験」です。それはそれでカルチャーショックで楽しいです。
そこの部屋では昔ながらに木を燃やしてストーブをたいていて、木の煙を煙突で外にだすときに水蒸気が冷えて、煙突から雫がもれてポタポタ落ちていて、バケツ一杯に真っ黒な天然の木酢液がたまっていて、そのバケツの中に小指をちょっとだけつっこんで、口に入れてなめてみる瞬間が、「田舎体験」です。
そうやって天然の農薬を作っていたこと、これなら確かに安全で、かつ虫が寄りつかなそうだと、「五感で」感じるわけです。

農業体験と田舎体験を明確に線引きすることは難しいですが、化学的なものを使わない、自然に逆らわない生活、自然と共に生きる体験が、田舎体験と思ってください。
こういう田舎の生活を今も実践しているのは多くの場合お年寄りであり、田舎時間におけるお年寄りの重要性を改めて感じます。

ごちゃごちゃと書きましたが、要は、農業体験も面白いけど、田舎体験をもっとしたい!ということですね。


▼その他(今回の講演で聞いたこと考えたこと)

・田舎時間は、上山側で、上山の価値を「気づかせる」存在となっている。
上山の価値を、上山に住んでいる人たちが、まずもっと理解して、みんなで共有しないといけない、上山には素晴らしいものがたくさんある、という事を、田舎時間は気づかせてくれた。といったようなことを何人もの地元の方におっしゃって頂きました。

・農業の魅力は、自然とともに暮らすこと
(農家の)吉田さんがおっしゃっているのを聞いて、「おー、僕もそれを言いたかったんだ」と思いました。
農業と、他の職種が異なる点は、自然とともに生きるかどうか、というところにあると思います。天候にあわせて作業内容を変えるし、天災があれば大変だし、天気がうまくいけば豊作だし、夏は暑いから朝早い内から作業するし、人間が作った時間の流れで生きていません。
こちらの方が無理のない生き方だと思うから、多くの人が農業に惹かれるのではないでしょうか。

・ないものねだり
田舎の若者が都会に憧れる気持ちと、都会の若者が田舎に憧れる気持ちは、「ないものねだり」という点では同じですが、本質的には異なります。都会の若者が田舎に憧れるのは、都会の生活は不自然であって、持続可能でないと体で感じているからです。
人間らしい生活に戻りたいという欲求が、田舎に憧れる気持ちの後ろに流れているわけですね。